カスタマーインタビュー 愛知県がんセンター研究所 ユニット長 井上聡

カスタマーインタビュー 愛知県がんセンター研究所 ユニット長 井上聡

Satoshi Inoue
2017年、東京大学大学院医学系研究科ゲノム医学講座(特任助教)、2018年、国立研究開発法人国立がん研究センター研究所 特任研究員。世界に先駆けて子宮腺筋症臨床検体のエクソーム解析から子宮腺筋症の約4割で子宮内膜症と同一のKRASの変異が生じていることを報告(2019, Nature Comm.)。2021年より、愛知県がんセンター所属。

 

キャプチャ実験は、一貫して高速型のハイブリプロトコルを使っています

 井上さんは東京大学のゲノム医学講座と国立がんセンター研究所の細胞情報学分野の在籍時、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体や凍結検体の非がん部組織のゲノム解析に焦点を当てて研究を進めてこられた。Twistのターゲットエンリッチメントによる次世代シーケンス(NGS)アッセイの利用においては、特にゲノムDNA(gDNA)のライブラリ調製法について、物理的断片化と酵素による断片化の使い分けをされた。いずれの断片化においても、Twist Universal Adapter Systemと組み合わせたTwistライブラリ調製キットを用いてインデックス付きライブラリの調製を行った後、「Twist Core Exomeパネル」と「RefSeqパネル」を組み合わせて、または既製品のパネルである「Twist Comprehensive Exomeパネル」を単独で用いて、高速型のキャプチャハイブリ法でエクソーム解析を進めてこられた。

「ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体の中でも、特に古いFFPE検体の場合は、Covaris社のソニケーターを用いて物理的に断片化してから御社のライブラリ調製キット(Twist Library Preparation Kit, Mechanical Fragmentation)と組み合わせてきました。gDNA量が少ない時には、ソニケーターにかけるどうしてもロスが出てしまうので、御社のEFキット(Twist Library Preparation EF Kit)を用いて酵素による断片化を行ってライブラリを調製することもあります。また、凍結サンプルでは、断片化酵素のバイアスの可能性が気になるため、物理的断片化としてきました。一方、キャプチャ実験は、一貫して高速型のハイブリプロトコル(Twist Fast Hybridization Target Enrichment Protocol)を使っており、ハイブリ時間はカバレッジが最大化される2時間としています。」

 TwistのExomeパネルは自由にカスタマイズすることが可能で、在籍時の間野研究室ではカスタムエクソームパネルも使われている。カスタム領域をスパイクイン方式で加えても、高速型ハイブリで均一なカバレッジが得られることもTwistの特徴である。

 「既製品のComprehensive Exomeパネルはコストパフォーマンスが良く、Core ExomeとRefSeqパネルの組み合わせから移行して現在に至っています。NGSデータの解析において、Twistのターゲットエンリッチメントソリューションはリードカバレッジの均一性が高いので、コピー数解析を行う上でも、コピー数解析用のカスタムプローブをスパイクイン方式で加える積極性を特に感じていません。既製品のExomeパネルで十分コピー数解析ができると思います。」

Twistのエクソームはユニークリードが均一で高いカバレッジを示すことが強みです

 これまでも井上さんはキャプチャ用のライブラリ調製を行い、別のエクソーム解析を経験されてこられた。Twistのライブラリ調製キット、特にTwist Universal Adapter Systemと、エクソン領域にフォーカスした既成品パネルによるキャプチャ実験の良いところを再度、お伺いした。

「Twistはアダプターのライゲーションがしっかりしているので、限られたシーケンス量でユニークリードのカバレッジの厚みを得ることに上手く効いていると思います。ノンコーディング領域を含めたカスタムパネルでも、既製品のパネルで得られるカバレッジの均一性をある程度維持できると伺いました。今後、エクソンの周辺領域も広く網羅したExomeパネルで、Twistのライブラリ調製キットと組み合わせて評価できればと考えています。」

メチル化解析のカスタムパネルでも均一性の高いカバレッジを得られることを期待

最後に今後、井上さんが着手されたい新たなアプリケーションについてお伺いした。

「NGSによるターゲットメチル化解析に興味があります。網羅的とまではいかないまでも、ある程度コアとなるCpG領域など、がんに関連する遺伝子のメチル化をキャプチャ法で効率良く検出できるようなパネルがあれば活用したいと思います。メチル化解析用のライブラリ調製について、私はNew England Biolabs®(NEB)の酵素を使った変換法の経験があります。酵素による変換法はバイサルファイト法に比べてgDNAのダメージに伴うバイアスが少ないです。微量でも均一性の高い結果が得られるNEB社の酵素法によるライブラリ調整法と、Twistのキャプチャ法を組み合わせたプロトコルがTwistから提供されると良いですね。」

Twistは、2021年春、NGS関連ツールの新製品としてDNAメチル化のソリューションの提供を開始した。NEBとの提携により、調製時のダメージを与えるバイサルファイト法を不要とする新しいメチル化シーケンスのワークフローを提供する。Twistのターゲットメチル化ソルーションは、様々なサイズのカスタム/カタログパネルで、低メチル化から高メチル化まで一貫したキャプチャ性能を示すことが特徴であある。今後、リキッドバイオプシーなど、幅広い用途で効率的なNGSメチル化検出システムを展開する予定である。