2021.1 トピックス:WHOがSARS-CoV-2のゲノム配列決定に関する公衆衛生への影響を最大化するための実施ガイドを発表

2021年1月8日、WHOは「Genomic sequencing of SARS-CoV-2 – A guide to implementation for maximum impact on public health(SARS-CoV-2のゲノム配列決定 – 公衆衛生への影響を最大化するための実施ガイド)」を発表しました。

このガイドラインは、Twist Bioscienceが提供する次世代シーケンス(NGS)を用いる「ハイブリダイゼーションキャプチャ法のシーケンシングアプローチ(以下、キャプチャベースのNGS)」が、「マルチプレックスPCR法のシーケンシングアプローチ(以下、アンプリコンベースのNGS)よりもどのように優れているかについての示唆を含むものとなります。すでにTwistは、武漢型のSARS-CoV-2に対して設計・製造されたTwistのNGSパネルによるキャプチャベースのNGSのアッセイにおいて、変異株のRNAコントロールの希釈系列アッセイから、1塩基置換のみならず、10塩基欠失サイトにまたがるリードを正しく欠失を検出できたことをアプリケーションノートに示しています。

以下、そのハイライトをご紹介します(日本語は参考訳になります)。

・キャプチャベースのNGSとは異なり、アンプリコンベースのPCRやNGSは、標的とする配列と使用するプライマーとの間にミスマッチがあると機能しません。そのため、標的とするゲノムの変異は比較的低くなければならず、また、より保存性の高いゲノム領域を標的とするようにプライマーを設計するため、標的配列が十分に知られている必要があります。SARS-CoV-2はヒトでは最近出現したばかりであり、全世界的に比較的低いゲノム多様性を示すことを考慮すると、PCRベースの手法が現在のところSARS-CoV-2の配列決定に非常に適しています。しかし、プライマー結合部位の変異によってアンプリコンが出来なくなる状況を注意深く監視し、障害が発生した場合にはプライマーを交換する必要があります。

・さらに、PCR診断アッセイで標的とされるゲノム領域は、一般的なアンプリコンベースのNGSで使用されるものよりはるかに短いため、PCR診断に比べ、RNA分解がPCRベースのNGSでは、より大きな影響を与えます。

・アンプリコンをより長くすることで、全ゲノムをとらえるために必要なPCRプライマーの数は少なくなりますが、1つのプライマーペアで増幅に失敗すると、コンセンサスゲノム内のギャップがより大きくなる可能性があります。

・アンプリコンベースのNGSではなくキャプチャベースのNGSを使用することの利点の一つは、キャプチャベースのNGSが、プローブ配列に対して10〜20%の配列の違いがあっても機能することです。この値は、PCRによるアンプリコンベースのNGSが変異に対して許容できるミスマッチよりも遥かに高く、多くの変異が導入されているウイルスに対し有利な方法です。したがって、キャプチャベースのNGSを、比較的多様性の高いSARS-CoV-2配列の濃縮のために首尾よく用いることができるのです。

・”Unlike capture-based approaches, amplicon-based approaches do not tolerate substantial mismatch between the targeted sequence and the primers that are used. The targeted genomic diversity must therefore be relatively low, and/or the target sequence sufficiently known to allow primers to be designed to target more conserved genomic regions. Given that SARS-CoV-2 has only recently emerged in humans and therefore shows relatively low global genomic diversity, PCR-based approaches are currently highly appropriate for SARS-CoV-2 sequencing. However, the occurrence of amplicon failures needs to be monitored and primers replaced where failure occurs as a result of substitutions in primer binding sites.

・In addition, genomic regions targeted in PCR diagnostic assays are typically far shorter than those used in common amplicon-based sequencing approaches, so RNA degradation will typically affect PCR-based sequencing more than PCR diagnostics.

・Longer amplicons require fewer PCR primers to scaffold the whole genome, but may result in larger gaps in the consensus genome in the event of an amplification failure of one primer pair.

・One advantage of using a capture-based approach over a PCR amplicon-based approach is that capture-based approaches can tolerate sequence differences from the probe sequences of 10-20%. This is higher than the mismatch tolerated by PCR, where such a divergence from the primer sequences would result in a high risk of amplicon failure. Capture-based approaches can therefore be used to enrich successfully for relatively divergent SARS-CoV-2 sequences.

参照英文資料:
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/338480/9789240018440-eng.pdf